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松尾潔がスマイルカンパニーとの契約終了は、ジャニーズ批判が理由と告発、山下達郎も加担したと批判

 音楽プロデューサーの松尾潔氏(55)がツイッターを通じて発言した、同氏が音楽事務所「スマイル・カンパニー(SC)」との契約解除の理由が同氏のジャニーズ批判によるものだとし、松尾氏の契約解除について、故ジャニー喜多川氏と長年親しい関係にあったシンガー・ソング・ライターの山下達郎氏(70)が同意したと告発した内容が物議をかもしている。

 この件について、山下氏は自身のラジオ内で事細かく反論し、ジャニー喜多川氏の性加害問題騒動はここにきて音楽業界にも広がり始めている。

 山下氏は9日自身のラジオ番組「山下達郎の楽天カード サンデー・ソングブック」(TOKYO FM)に出演し、松尾氏のツイッターでの批判に1つ1つ反論し、「松尾氏がジャニー喜多川氏の性加害問題に対して憶測に基づく一方的な批判をしたことが契約終了の一因であったことは認めますけれど、理由は決してそれだけではありません」と明かすなど、松尾氏と音楽事務所・スマイルカンパニー(SC)の契約解除の理由は直接明かさないものの一通り説明した。

 だが、ネット上や週刊誌上では、今回の山下氏の説明でかえって「ご縁とご恩」があるとする故ジャニー喜多川氏との親密な関係が浮き彫りになり、山下氏は「性加害が本当にあったとすれば、それはもちろん許し難いこと」としてすべてを肯定しているわけではないが、ジャニー氏のジャニーズ・ジュニアたちへの性加害問題への批判が山下氏にも及び始めている。

音楽プロデューサーの松尾潔氏の画像(本人のツイッタープロフィール画像より)

松尾潔氏が山下達郎氏を批判した内容

 今回の騒動の元になったのは、7月1日に松尾氏が投稿した後のツイートである。そのツイートでは、「15年間在籍したスマイルカンパニーとのマネジメント契約が中途で終了になりました」とつづられ、そのマネジメント契約の終了の理由として、「メディアでジャニーズ事務所と藤島ジュリー景子社長に言及した」ことだと松尾氏は分析していた。

 さらに、そのあとスマイルカンパニーに所属する山下達郎氏について、松尾氏とスマイルカンパニーがマネジメント契約を解除するという「会社の方針に賛成とのこと」と述べ、「残念」だと批判的に記した。

 その後、日刊ゲンダイの自身の連載コラム「松尾潔のメロウな木曜日 」の中で弁護士を通じ、山下達郎・竹内まりや夫妻が今回の契約解除に合意しているという事実を確認したことを暴露した。

 詳しい内容は日刊ゲンダイの元記事にあるが、山下達郎氏との今までの関係性やスマイルカンパニーとの業務提携の経緯、ジャニーズ問題に関して考えていること、なぜジャニー喜多川氏を批判するのかなどを記している。

 その中で、5月15日のラジオでの発言を改めて記している。

「今回の疑惑を放置することは、ジャニーズ事務所だけの問題じゃないと思っています。一番の弊害は、今回の報道やマスコミの有り様を見た子供たちが、もし性犯罪・性暴力の被害者になったとき『声を上げても無駄だ』という諦めの気持ちになるかもしれないことです。疑惑を放置することで、社会全体が諦めの気持ちを子供たちに植え付けかねないのではと怖れを感じています。メディア、広告業界、芸能界だけでなく、みんながこの問題を直視しない限り、性加害や性暴力は、この先もなくならないでしょう。音楽業界に身を置く私も正直つらいです。ましてや、こういう世界に憧れたことがある、あるいは憧れている家族がいる、といった人たちも胸を痛めているはずです。私たち一人一人が、この国が抱える問題として当事者意識を持ち、みんなで膿を出すというところに、舵を切るべきじゃないでしょうか」

と引用していた。これについて、松尾氏はこれは批判ではなく提言の意図で発信したもので、のちに山下氏やスマイルカンパニー側の明かした契約解除の理由として挙げられた、ジャニーズ事務所への批判ではないと強調。

 16日にそのラジオでの発言の書き起こし記事がヤフーニュースで配信され、スマイル・カンパニーの社長である小杉周水氏が松尾氏を18日に本社オフィスに呼び出し、「ジャニーズやジュリー社長の名前をメディアで口にすること自体を問題視」し、マネジメント契約の中途解約を申し出たと経緯を語っている。

 その中で、松尾氏はジャニーズへの「不敬罪」だ(君主などへの名誉や尊厳を害する行為により成立する罪、戦前には日本にも存在した)と表現し、何の釈明の余地なく一発退場させられたと怒りをあらわにしている。

 松尾氏はSC社長の申し出に納得できず、さまざま会社や業界の体質の改革などを訴えたが、小杉氏は涙を流しながら解約の要求を繰り返し、松尾氏も彼の立場を理解しもらい泣きをしたとつづった。

 そして再び6月2日に小杉氏にオフィスで会うが、小杉氏は松尾氏に山下達郎・竹内まりや夫妻が今回の契約中途解除に「賛成」していることを伝えられ、結局弁護士を通じ6月末までの契約解除に応じた。その間にも、本当にいままで親交のあった山下氏や竹内まりや氏が今回の決定に賛成なのか疑念を抱き、弁護士を通じ事実確認を行ったが、改めて同夫妻が賛成したと回答を受け、契約解除に向けた最終的な合意に応じた。

 今回の契約解除について松尾氏は冷静に分析している。山下家と社長の小杉家、ジャニー事務所社長のジュリー氏の藤島家の親密な関係があると考えている。松尾氏のジャニーズ事務所批判は正論かもしれないし、そのことは彼らも認識しているが、これまでのジャニー喜多川氏などジャニーズ側との付き合い、すなわち「義理と人情」から松尾氏は排除されたのだとつづった。

 コラムの最後に松尾氏は山下氏の昨年発表した楽曲から引用して、今の自身の心境を語っている。

「許してはならないこと あったはずじゃなかったのか ねえ、違うの? なぜ、言えないの? 何も、出来ないの? どうして? どうして? 何も言えないの? どうして? どうして?」

 つまりは、業界や人間関係のしがらみで正しいこと(ジャニーズ事務所の性加害問題についての意見表明や批判)を当たり前に言えない現状を嘆いているということだろう。

山下達郎氏の写真(日刊ゲンダイの記事より引用(2023/07/11):https://news.yahoo.co.jp/articles/c39e2877a7249f3c1df6c1a81666925b0d4f6f87/images/000)

山下達郎氏のラジオでの反論の内容

 一方で、山下達郎氏も自身のラジオの中で松尾氏の主張に反論している。9日のラジオ番組「山下達郎の楽天カード サンデー・ソングブック」(TOKYO FM)の中で以下のように発言した。

全文:

 さてこの度私のオフィス、スマイルカンパニーと業務提携をしていた松尾潔氏が契約終了となり、そのことについて私の名を挙げたことでネットや週刊誌等で色々と書かれております。

 私はツイッター・フェイスブック・インスタといったモノを一切やっておりませんのでネットで発信することが出来ません。そのため私の唯一の発信基地であるこの『サンデー・ソングブック』にて私のお話を皆さんにお聞きをいただこうと思います。少々長くなりますがお付き合いください。

 まずもって、私の事務所と松尾氏とはですね彼から顧問料を頂く形での業務提携でありましたので、雇用関係にあったわけではない。また彼が所属アーティストだったわけでもなく、したがって『解雇』には当たりません。弁護士同士の合意文書も存在しております。

 松尾氏との契約終了についてはですね、事務所の社長の判断に委ねる形で行われました。松尾氏と私は直接、何も話をしておりませんし、私が社長に対して契約を終了するよう促したわけでもありません

そもそも彼とは、もう長い間会っておりません。年にメールが数通という関係です。今回、松尾氏が、ジャニー喜多川氏の性加害問題に対して憶測に基づく一方的な批判をしたことが契約終了の一因であった、ということは認めますけれど、理由は決してそれだけではありません。他にもいろいろあるんですけれど。今日この場ではそのことについては、触れることを差し控えたいと思います。

 ネットや週刊誌の最大の関心事はですね、私がジャニーズ事務所への忖度があって、今回の1件もそれに基づいて関与しているのでは、という根拠のない憶測です。今の世の中は、なまじ黙っていると『言ったもの勝ち』で、どんどんどんどんウソの情報が拡散しますので、こちらからも思うところを正直に率直にお話ししておく必要性を感じた次第であります。

 今、話題となっている性加害問題については、今回の一連の報道が始まるまでは、漠然とした噂でしかなくて、私自身は1999年の裁判のことすら聞かされておりませんでした。

 当時私のビジネスパートナー、ジャニーズの業務を兼務していましたけれど、マネージャーでもある彼が『1タレント』である私に、そのような内情を伝えることはありませんでした。性加害が本当にあったとすれば、それはもちろん許しがたいことであり、被害者の方々の苦しみを思えば、第三者委員会等での事実関係の調査というのは必須であると考えます。

 しかし、私自身がそれについて知っていることが何もない以上、コメントの出しようがありません。自分はあくまで『一作曲家・楽曲の提供者』であります。

 ジャニーズ事務所は他にも、ダンス・演劇・映画・テレビなど業務・人材も多岐にわたっておりまして、音楽業界の片隅にいる私にジャニーズ事務所の内部事情など、まったくあずかり知らぬことですし、まして『性加害』の事実について、私が知る術は全くありません。

 私は中学生だった1960年代に、初代ジャニーズの楽曲と出会って、ジャニー喜多川さんという存在を知りました。何年か後に、初代ジャニーズの海外レコーディング作品を聞いて、私はとても感動して、この『サンデー・ソングブック』でも特集したことがあります。1970年代の末に、私の音楽を偶然に聞いたジャニーさんに褒めて頂いて、そのご縁で数年後に私のビジネスパートナーが近藤真彦さんのディレクターとなったことから『ハイティーン・ブギ』という作品が生まれました。

 その後も、ジャニーズに楽曲を提供する中で、多くのすぐれた才能と出会い、私自身も作品の幅を大きくひろげることが出来、成長させていただきました。たくさんのジャニーズのライブに接することが出来たおかげで、『KinKi Kids』との出会いがあって、そこから『硝子の少年』という作品を書くことが出来て、昨年の『Amazing Love』まで彼らとの絆はずっと続いております。

 芸能というのは、『人間が創るもの』である以上、人間同士のコミュニケーションが必須です。どんな業界・会社・組織でも、それは変わらないでしょう。

 人間同士の『密』な関係が構築できなければ、良い作品など、生まれません。そうした数々の才能あるタレントさんを輩出した、ジャニーさんの功績に対する、尊敬の念は、今も変わっていません。私の人生にとって、一番大切なことは『ご縁』と『ご恩』です。ジャニーさんの育てた、数多くのタレントさんたちが、戦後の日本で、どれだけの人の心を温め、幸せにし、夢を与えてきたか。私にとっては、素晴らしいタレントさんたちや、ミュージシャンたちとの『ご縁』を頂いて、時代を超えて、長く歌い継いでもらえる作品を作れたこと、そのような機会を与えて頂いたことに、心から恩義を感じています。

 私が、一個人、一ミュージシャンとして、ジャニーさんへのご恩を忘れないことや、ジャニーさんのプロデュサーとしての才能を認めることと、社会的・倫理的な意味での性加害を容認することとは全くの別問題だと考えております。作品に罪はありませんし、タレントさんたちも、同様です。繰り返しますが、私は性加害を擁護しているのではありません。アイドル達の芸事に対するひたむきな努力を間近で見てきた者として、彼らに敬意を持って接したいというだけなのです。

 ですから、正直残念なのは、例えば素晴らしいグループだった『SMAP』の皆さんが解散することになったり、最近では、『キンプリ』が分裂してしまったり、『あんなに才能を感じるユニットがどうして?』と疑問に思います。私には何もわかりませんけれど、とっても残念です。

 願わくばみんなが仲良く連帯して、素晴らしい活動を続けて行ってほしいと思うのは私だけではないはずです。『KinKi Kids』、『嵐』、他のグループもみんな、末永く活動していってほしいと思うばかりです。先日、『男闘呼組』の再結成という嬉しいニュースがありましたが、同じようにいつか近い将来『SMAP』や『嵐』、『キンプリ』の再集合も実現するような日が来ることを『竹内まりや』共々に願っております。

 性加害に対する様々な告発や、報道というのが飛び交う今でも、そうした彼らの音楽活動に対する私のこうした気持ちに変わりはありません。

 私の48年のミュージシャン生活の中でたくさんの方々から頂いた、『ご恩』に報いることが出来るように、私は、あくまで『ミュージシャン』という立場からタレントさんたちを応援していこうと思っております。

 彼らの才能を引き出し、良い楽曲を共に作ることこそが、私の本分だと思ってやってまいりました。この様な私の姿勢をですね『忖度』あるいは『長いものに巻かれている』と、その様に解釈されるのであれば、それでもかまいません。きっとそういう方々には、私の音楽は不要でしょう。以上が、今回のことに対する、私からのご報告です。長々失礼しました。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

山下達郎氏のラジオの中での注目のポイントは、

①松尾氏の契約解除は社長の判断によるもの(自身は関与していない)

「松尾氏がジャニー喜多川の性加害問題について憶測に基づく一方的な批判をしたことが契約終了の一因であった」、他にも理由があるがそれは明かせない

③ジャニー喜多川氏が性加害をおこなっていたならば許しがたいことだ。だが、事実関係を知らないのでコメントする立場にない。

④ジャニー喜多川氏をはじめジャニーズ事務所とは「ご縁」と「ご恩」という強い関係があり、ジャニー氏へのご恩を忘れることはできない。

(ジャニー氏をはじめ)才能と「性加害問題」をはじめとする騒動は分けて扱うべきだ。

⑤私の姿勢を(ジャニーズ事務所への)「忖度」とみなしても構わないが、「そういう方々には、私の音楽は不要でしょう」と発言。

以上のようになっていた。

 ネットなどで批判が目立ったのは、山下達郎氏が一応ジャニー喜多川氏の性加害問題が事実ならば「許しがたいこと」と断りを入れたものの、ジャニー喜多川氏やジャニーズ事務所との「ご恩」や「ご縁」があることを強調したり、音楽や才能と性加害問題は切り分けて考えるべきだと、ジャニー氏を擁護していると取られかねない発言を繰り返したからだ。

 さらにこれだけジャニー氏のよる「性加害」問題が報じられ、被害者の人々が相次ぎ告発を続ける中において、そうした被害者の存在をある意味無視し、事実関係を知らないと責任を逃れる姿は社会人として問題があるのではないかと思わせた。

 また、発言の半分以上が、松尾氏への反論や自身の今回の騒動の釈明ではなく、自らとジャニーズの親密ぶりや関係性を伝えるもので、聞き手やこれをニュース報道を通じて知ったものは、結局山下氏はジャニー氏と一蓮托生でつながっているイメージを強くしてしまったことも、そうした見方を強めた。

 それ以上に、今回の発言が反感を買ったのは、自分のアンチ(嫌う人たち)は自分の曲を聞かなくて結構だ、とファンを分断するような発言もファンからは騒動と音楽(の才能)を切り離すべきだと訴えておきながら、自身の気に入らないファンは切り捨てる姿を見せたことも、一部の人々の反感を招いている。

 山下氏は反論し今回の事態を鎮静化させたかったのかもしれないが、結果として、今回の騒動が週刊誌やワイドショー、ネット上で注目の的になることに意図せず、貢献してしまったようだ。

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