日大アメフト部に所属する3年生の部員・北畠成文容疑者（21）が5日の朝午前9時ごろに警視庁に逮捕された。先月6日から覚せい剤と大麻を所持するなどして、覚せい剤取締法違反・大麻取締法違反の疑いがあるという。

3日には学生寮へ家宅捜索、植物片や錠剤から薬物成分を発見・焦点は他の部員の関与

　3日には中野（東京都）にある日大アメフト部の学生寮に警視庁の家宅捜索がおこなわれ、乾燥大麻の植物片と錠剤に入った覚せい剤が確認された。　

　3日の家宅捜索からわずか2日ほどでの容疑者逮捕で事態は一気に進んだ形だ。今後、警視庁としては他に覚せい剤や大麻などを使用または所持していた部員がいないかや、入手ルートなどについて捜査を進める意向で、大学の調査などを待たず、警察が積極的に大学への捜査を進める姿勢を見せている。

警察は日大の薬物への対応に不信感か　

　警察がここへ来て捜査から逮捕まで捜査に本腰を入れ始めた背景に、日大の内部調査では事情がはっきりせず日大は今回の薬物事件を隠蔽したり時間稼ぎをしようとしているのではないかと不信感を抱いたためだ。

　実際去年の11月から大学側に内部から部員が大麻を使用しているなどの通報があったが、大学当局は部員に聞き取り調査をおこなったが、部員の薬物の使用や所持を否定する結論を下し、警視庁には問題がないと報告した。

　その後、部員の保護者を名乗る人物から「部員が寮内で大麻を吸っている」との通報を受け、大学当局は先月（7月）6日に北畠容疑者の部屋などから薬物と思われるものを発見していたが、警視庁には通報せず大学側で保管していたという。その2週間後に警察がそれら証拠品を押収。

　日大が証拠隠蔽を意図した可能性も、問われる日大の責任

　そこから警視庁の捜査が本格化することになり、今月3日の家宅捜索では、警視庁の捜査員が中野（東京都）にある日大アメフト部の学生寮の北畠容疑者の部屋や共有スペースの屋上部分で薬物がないかを捜査したという。

　いずれにせよ、大学としては去年の11月から状況をある程度認識していながら、隠していた可能性が否めず、また大学が、先月発見した大麻や覚せい剤などの違法薬物を警察にすぐ引き渡すことなく所持していたということになり、メディアなどではこれは薬物の尿検査で薬物成分が検出されないようにするための証拠隠蔽の可能性すら指摘されている。

　昨年日大の新体制の目玉だった林真理子日大理事長と日大の学長はこの度の薬物事件について記者会見を行う予定だが、こうしたガバナンス不全、コンプラインす（法令遵守）軽視、隠蔽体質といった旧態依然と言われかねない今回の疑惑にどう対応するかが問われている

名誉挽回の最中、3年生の有力選手がなぜ…/日大アメフト部解体の可能性も

　今回逮捕された北畠容疑者は日大アメフト部「フェニックス」に所属し、有力選手と目されていたという。日大は2018年の関西学院大学との試合における「悪質タックル」事件で公式試合への出場停止処分やコーチや監督の除名や永久追放処分など厳しい制裁が課された。その後、5年あまり経ち、新監督に選手の自主性を尊重することを求めるなどの選考基準を示すなどして改革を進めていたが、今回の薬物事件の行方次第ではアメフト部の解体に進む可能性すらある。

　北畠選手はようやく関係者の努力で再生しつつあった日大アメフト部を3年生としてリードし後輩のために活躍の場を引き継いでいく立場のはずが、それをぶち壊す結果になってしまったというのは、なんとも皮肉だ。